的確・迅速な診断を
私がこれまで長年にわたり力を注いできた甲状腺・頭頸部(とうけいぶ)腫瘍疾患については、専門外来で診療させていただきます(紹介状をお持ちでない初診の方はまずは通常の外来診療で診させていただきます)。学会認定頭頸部がん専門医・指導医の強みを活かし、的確・迅速な診断と治療方針を提示させていただきます。もし悪性腫瘍(がん)が判明した場合は速やかに頭頸部がん治療専門施設への紹介を行います。がん治療後の定期チェックも当院で行うことができます。
のどぼとけ(甲状軟骨(こうじょうなんこつ))のすぐ下にあるのが甲状腺です。
甲状腺は生命活動維持や体内のカルシウム調節に欠かせないホルモンを分泌する重要な臓器です。
甲状腺腫瘍は甲状腺に発生する腫瘍で、多くの場合自覚症状はありませんが、
首の前側に比較的かたいしこりとして触れることができます。
腫瘍が大きくなってくると見た目にも首がはれているのがわかるようになります。
甲状腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(甲状腺がん)があり、治療としてはいずれも手術となります。
良性腫瘍では特にサイズの大きいものや自覚症状(飲み込みにくさや圧迫感など)の強いものを除いて、
定期的な経過観察となります。
一方、甲状腺がんは原則的に手術が必要ですが、ほとんどが手術をすれば完治します。
ただし甲状腺がんの一部には、進行が早く、すぐに命に関わるものもあり、適切な診断と治療方針の決定が重要です。
当院ではエコー検査と穿刺吸引細胞診(細い針を甲状腺腫瘍に刺して細胞を採取する)により手術が必要か
定期的なチェックのみでよいかを判断しています。
初期の舌がん
舌がんは舌にできるがんで、口腔(こうくう)がんのひとつです。入れ歯が舌にあたる刺激や、飲酒、喫煙が原因となりますが、これらの原因がなくても発生することもあります。初期症状としては舌のしこり、軽い痛み、赤み、白い変化などがあります。口内炎と間違えて放置され進行してしまう場合がありますので注意が必要です。がんが疑わしい場合にはその部位から組織を一部採取して検査します。 治療は、手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。小さいうちに発見できた場合には、舌を部分的に切除するのみで完治できる場合が多く、早期発見・早期治療が非常に大切になります。進行している場合には、舌の大きな切除や、首のリンパ節の摘出が必要になります。切除範囲が大きくなる場合には、食事や会話がうまくできないなどの後遺症を残す可能性が高くなります。舌が大きく欠損してしまう場合には必要に応じてお腹や太ももから皮膚や筋肉を採取・移植し、失われた舌を再建します。また、術後にがんの再発予防目的に放射線治療や抗がん剤治療を行う場合もあります。
口腔底がん
口腔がんは、口の中にできるがんの総称です。口腔がんのうち、もっとも多いのが舌がんです。舌がん以外に、歯茎にできる歯肉(しにく)がん、下あごの歯茎と舌に囲まれた部分にできる口腔底(こうくうてい)がん、上あごにできる硬口蓋(こうこうがい)がん、頬粘膜(きょうねんまく)がん、口唇(こうしん)がんなどがあります。歯肉がんは舌がんの次に多い口腔がんで、歯茎のはれや出血、歯のぐらつきが症状であり、歯周病と間違われ診断が遅れることがあります。口腔底がん、硬口蓋がん、頬粘膜がん、口唇がんなどは、いずれも粘膜のただれやしこり、赤み、白い変化などがおこります。初期には口内炎とまぎらわしく注意が必要です。 治療は、手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。小さいうちに発見できた場合には、後遺症をほとんど残さない程度の切除で完治できますが、進行している場合には、あごの骨など周囲の組織も含めた大きな切除や、首のリンパ節の摘出が必要になる場合があります。手術により組織が大きく欠損してしまう場合には必要に応じて他の部位から皮膚・筋肉・骨などを採取・移植し再建します。その場合、術後の食事や会話に後遺症を残す可能性があります。また、術後にがんの再発予防目的に放射線治療や抗がん剤の治療を行う場合もあります。
咽頭は、大きく3つの部分に分けられます。鼻の奥にある上咽頭、口の奥にある中咽頭、食道の入口にあたる下咽頭です。
いずれの部分にもがんができますが、それぞれ特徴が異なります。
鼻の奥・のどの最上部に発生するがんで、耳管(耳と鼻をつなぐ管)を圧迫する
ことによっておこる耳のつまり感・聞こえにくさ(滲出性(しんしゅつせい)中耳炎)や、鼻づまり、鼻血などの症状があります。
がんが進行して脳の近くに入り込むと、顔の感覚や物が二重に見えるなどさまざまな脳の神経の症状を引き起こします。
また、首のリンパ節への転移によって発覚することもあります。
上咽頭に腫瘍がある場合、鼻から腫瘍の一部を採取し診断を確定します。
手術が困難な部位でもあり、放射線治療や抗がん剤が主な治療となります。
扁桃腺(口蓋扁桃)やそのまわりに発生するがんです。
喫煙・飲酒やウイルス(ヒトパピローマウイルス)が原因となります。
初期ではのどの違和感やしみる感じ、進行すると、のどが痛い、しゃべりにくい、飲み込みにくい、
息苦しいなどの症状が徐々に強くなります。耳の痛みを感じることもあります。
がんの可能性がある場合、口もしくは鼻から腫瘍の一部を採取し診断を確定します。
治療は、手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。
のどの下部・食道の入口付近にできるがんで、喫煙・飲酒と強い関連があります。
同じ原因で発生する食道がんの合併率が高いことが知られています。
初期では、のどの違和感など症状が軽いことが多く、進行すると、のどが痛い、飲み込みにくい、
声がかすれる、息苦しいなどの症状が出ます。耳の痛みを感じることもあります。
最近では、内視鏡の進歩によって比較的早い段階でたまたま発見されるケースも増えてきましたが、
それでも進行した状態で見つかるほうが圧倒的に多いがんです。
下咽頭に腫瘍が見つかった場合、内視鏡で腫瘍の一部を採取し診断を確定します。
治療は、手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。
初期のがんに対しては、皮膚を切らずに口の中から切除したり、放射線治療で治癒が望めますが、
進行すると声帯とともにがんを切除しないといけないことも多く、声が出せなくなるなどの大きな後遺症を伴います。
どのがんにも言えることですが、早期発見・早期治療が非常に大切であり、のどの違和感などのちょっとした症状でも
内視鏡などでの検査をおすすめしています。
喉頭がんは声帯とその周囲にできるがんで、喫煙者に多く発生します。
比較的初期から声がかすれてくるため早期に発見されることも多いですが、進行すると、声がれだけでなく
息苦しさなどの症状が現れてきます。
1ヶ月以上声がれが続く場合には、喉頭がんの疑いがありますので、早めに受診し内視鏡検査で確認することをおすすめします。内視鏡でがんが疑わしい場合、腫瘍の一部を採取し診断を確定します。
治療は、初期のがんであれば放射線治療で完治が望めますが、進行すると声帯の全摘出が必要になることも多く、
声が出せなくなるなどの大きな後遺症を伴います。
上顎洞がんは、上顎洞という副鼻腔から発生するがんです。
慢性副鼻腔炎が長年放置されると発生しやすくなると考えられています。
がんの初期では症状が出にくく、進行してから、鼻血や悪臭を伴う鼻水、頬のはれ、歯の痛み、
視力・視野の異常などで発覚することが多いです。
内視鏡やCTでがんが疑わしい場合、腫瘍の一部を採取し診断を確定します。
治療は手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。
耳下腺腫瘍
唾液腺は唾液を作る臓器です。主なものとして、耳のまわりにある耳下腺、あごの下にある顎下腺があります。唾液腺がはれているとき、耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍の可能性があります。それぞれに良性腫瘍と悪性腫瘍があり、良性腫瘍でははれ以外の症状はほとんどありませんが、悪性腫瘍(耳下腺がんや顎下腺がん)で進行すると顔が動かしにくくなったり(顔面神経麻痺)、痛みが出てくることがあります。良性腫瘍の中にも長年放置すると悪性腫瘍に変化するものがあり注意が必要です。 治療は、良性の場合は手術による摘出、悪性の場合は唾液腺にできた元々の腫瘍の他、頸部リンパ節やその他の臓器への転移を考慮した治療が必要になります。 当院では、エコー検査により唾液腺の状態を確認し、腫瘍があれば穿刺吸引細胞診(細い針を唾液腺腫瘍に刺して細胞を採取する)で良性か悪性かを調べます。良性腫瘍の一部のものについては当院での日帰り手術で摘出が可能です。